フォークリフトのバッテリー交換について徹底解説!

フォークリフトのバッテリー交換について徹底解説!

フォークリフトの動力はエンジン式とバッテリー(電池)式に分かれます。

2021年2月の国内フォークリフト販売台数を見ると、全体合計6404台のうちエンジン式が2,686台(うちガソリン式が1,264台・ディーゼル式が1,422台)、バッテリー式が3,718台となっています。比率でいうと、エンジン式が42%、バッテリー式が58%となり、バッテリー式の比率が高い状況です。

石油燃料が必要となるエンジン式よりもバッテリー式のほうがランニングコストが抑えられる点、バッテリー式は排ガスが出ないため環境にやさしく騒音も少ない点、エンジン式はバッテリー式よりも車体が大きいのでバッテリー式のほうが小回りがききやすいという点が人気の理由です。

とはいえ、バッテリー式フォークリフト販売の宿命となるのが、動力となるバッテリーの寿命です。末期寿命になるとバッテリー交換が必要になります。

バッテリーの末期寿命症状

フォークリフト用のバッテリーに限らず、どんなバッテリーにおいても同様ですが、寿命が末期に近づくにつれて様々な症状が出てきます。

1:稼働時間が短くなる

一番気づきやすい症状が、100%充電の直後でも、以前より稼働時間が短くなったと感じることです。

例えば、以前は満充電後だと一日フル稼働できていたのに、最近では一日持たなくなったという場合は、バッテリー交換時期が近づいているサインです。 他にも、バッテリー残量表示の減りが早くなったり、充電タイマが切れないといった症状が見られるようになります。

2:稼働中のパワーが不足する

バッテリーが寿命末期に近づくと放電能力が弱まるため、リフト作業の効率が悪くなったと感じられるようになります。

例えば、以前はパワフルに荷上げできていたのに、最近では荷上げに時間がかかるようになった、というような症状が見られます。

3:バッテリーの発熱やバッテリー液の減りが早くなる

バッテリーが劣化してくると、稼働中や充電中にバッテリーが熱くなりやすくなります。また、これによってバッテリー液が蒸発しやすくなり、液量が低下しやすくなります。

※バッテリー温度がモニターできる場合、50℃を超えたら作業を中止し、40℃以下に冷えてから作業を再開するようにして下さい。

4:爆発・火災・異臭

寿命末期となったバッテリーをさらに使い続けると、バッテリー内部に異常が生じて爆発や火災がおこる可能性が出てきます。

例えば、平成22年7月に、充電後のバッテリー式フォークリフトを用いて荷役作業を行っていたところ、運転座席下のバッテリーが破裂し、その反動で運転者が持上げられて労災が起こった事例があります。この原因は、バッテリーが老朽化しており特定自主検査においてバッテリーの交換が必要と指摘されていたものの、交換が行われていなかったことでした。

ほかにも、充電時にバッテリーから異臭がする(硫黄のような臭い)がしたりする場合もあります。

どれくらいの期間で寿命末期になるのか?

車両メーカー純正の新品バッテリーの場合、およそ1200サイクルが期待寿命といわれます。※実際の寿命は、一日の放電深さ、使用環境、日常のメンテナンス状況によって左右されます。

例えば、フォークリフトの稼働量の仮定として1営業日あたり1サイクルの充放電を行うとし、1年間の営業日数は246日と仮定すると、4~5年で寿命末期となります。


また、正規品でないバッテリーの場合は、早期電池消耗によって予想外に劣化が早くなるケースもあり、1年も経たずに交換が必要になってしまった事例も耳にします。

バッテリー状態の診断について

比重値を測定することによりバッテリーコンディションの概要を判断します。充電しても比重値が極度に低い場合、電極板の物理的な劣化やセルの故障が考えられます。


バッテリー寿命を延ばすために

フォークリフトバッテリーの寿命はメンテナンス状況によって大きく変わります。長く快適に作業するために、以下のポイントをご確認ください。

その①:定期検査は必ず実施

特定自主検査(年次検査)・月例検査・始業点検は、労働安全衛生法によって実施が義務付けられています。また、検査によって異常が見つかった場合は、速やかに対応するようにしましょう。

 

その②:バッテリー液の液量に注意する

バッテリー液(精製水)の液量は、充電時に起こる電気分解(水が水素と酸素に分解される)と自然蒸発によって減少します。液量の低下はバッテリー内の極版やセパレータの劣化を引き起こし、バッテリー容量の低下や短命化につながります。

 

電解液を最低液面以下に低下させないことが重要です。液量が極端に少ないと、バッテリーが過度に発熱したり、焼損の原因となる可能性があります。


逆に、バッテリー液の入れすぎについても注意が必要です。フロート上部の白線が見えたら、すみやかに補水をストップしましょう。 液量が多すぎると、補水中に吹きこぼれる可能性があります。

また、バッテリー充電中には液中に気泡が発生するため、その分水面が上昇して充電中に液が溢れる可能性があります。 液が溢れると、電流のリーク(漏電)等が起こる可能性があり、爆発や火災の原因となります。

また、放置するとバッテリー外装部分に硫酸結晶(白又は青緑色の結晶)ができるため、腐食や端子部のケーブル断裂、バッテリー機能損傷が起こります。 硫酸結晶は毒性も高いため、バッテリー外部に硫酸結晶が見られた場合は、専用の中和剤を使って綺麗にしておきましょう。 

その③:火気をバッテリーに近づけず、充電中は換気に注意。

上記の②で記載したとおり、フォークリフトの充電時には水素ガスは発生します。待機中や稼働中においても一部の水素ガスがバッテリー液中で気泡で残っています。

水素ガスはバッテリー外部に放出されますので、そこに火気があると引火してしまい非常に危険です。 火気をバッテリーに近づけないよう徹底し、充電中は特に換気に注意しましょう。

その④:正しく充放電を行う

100%を満充電とした場合、75%を超える放電は避けるのが理想です。バッテリーを使いすぎないように、早めに充電(普通充電)を行うとよいでしょう。

また、均等充電(全てのセルが100%を超える充電となるよう過充電すること)を月に1~2回(2~3週に1回程度)行いましょう。普通充電と均等充電をバランスよく行うことが理想です。


バッテリー交換が必要になったら

バッテリー交換が必要になった場合、いくつかの選択肢があります。ディーラーに全てお任せしてしまうのが一番楽で確実な方法になりますが、コストを抑えるなら他にも良い方法があります。

こちらの記事でいくつかの方法を説明していますので、ご覧ください。 

交換にかかる費用

電池容量によって価格は変わりますが、通常は数十万円から100万円を優に超えてきます。

主な交換方法ごとに費用を比較すると以下のとおりです。

交換方法 交換費用概算 耐用年数 金額/年 費用削減率
ディーラー交換 90万円 7年 12.8万円 0%
格安バッテリー(交換作業なし) 50万円 2.5年 20.0万円 +56%
バッテリー再生 40万円 3.5年 11.4万円 -11%
GB Traction Battery 60万円 7年 8.6万円 -33%

GB Traction Batteryについては、こちらのページをご覧ください。 

バッテリーの交換方法

座って乗るタイプの「カウンターバランス(カウンターフォーク)」タイプと、立った状態で操作する「リーチ」タイプで、バッテリーの収納方法が異なります。詳しい交換手順は、こちらの記事をご参照ください。 

まとめ

バッテリーに限らず、何らかの異常や補修が必要な事項が確認されたら、速やかに対策を講じる(修理等を先延ばしにしない)必要があります。

労働安全衛生規則第 151 条の 26 では、「事業者は、特定自主検査を行った場合において、異常を認めたときは、直ちに補修その他必要な措置を講じなければならない。」とされています。

バッテリーについても上記の内容をご参考に、メンテナンスを適切に行うこと、点検を欠かさないこと、寿命末期に達したら速やかに交換することを、保守ルールとして徹底されることをお勧めします。


この投稿をシェアする